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原作とコミカライズの間

近頃、漫画化(コミカライズ)されるミステリがやたらと多い・・・気がする。

確かにミステリというものは、文章だけ追っていてもなかなか理解しづらい場合が多々あり、絵で表現した方が直感的に分かりやすくて良い場合もままある。

しかし問題は、コミカライズする漫画家の画力だ。

画力というと語弊があるな(画力があるのは大前提)。「画風」と言った方が良いか。
シリアスでリアリティがありストーリーが二転三転する本格ミステリを、ロリ系の画風の漫画家がコミカライズしたら原作の雰囲気ぶち壊しである。
例えば、松本清張をコゲとんぼあたりがコミカライズしてみろ。無理にも程があるってものだ。

そこまで極端でなくとも、原作のイメージからかけ離れたルックス(妙に綺麗な金田一耕助とか、睫毛がムダに長くてキラキラしい浅見光彦とか)で描かれているのを見かけると本当にうんざりする。男ではありえない線の細さとかな。
大抵の探偵役――とくに私立探偵や素人探偵は、しばしば不審者扱いされる程におよそ「探偵らしくない」風貌をしている。それが却って「探偵らしい」のだ。
そんな探偵役のバックに花が飛んだり目に星が入っちゃマズイだろう。
※桜井京介のような美形をウリにしているキャラは例外。


そんなワケで、ミステリの漫画化には否定的な立場をとる私だが、例外もある。

JETさんという漫画家がそのひとり。一応少女漫画家の部類に入る…のか?
とにかく彼女の画風を見てくれ。エログロと汚いオヤジを描かせたら日本一である。
惨殺死体と化物を描かせたら世界一と言っても過言ではない。
※私基準なのであしからず。

彼女は、本陣殺人事件をはじめとして、数々の金田一耕助モノをコミカライズしている。私は、彼女以外が描く金田一耕助は認めない。それくらい金田一のイメージにハマっているのだ。
「本陣~」の生々しい殺人現場(しかも見開き)、「獄門島」の凄惨美。「睡れる花嫁」のグロさも良かったなあ(うっとり)。
彼女に金田一の全作品をコミカライズしてもらいたいくらい。
その他コミカライズ作品として、シャーロック・ホームズやエラリー・クイーンなどもある。どれを取ってもミステリマニアとしての愛情が感じられる質の高さである。

最近のミステリはあまりグロを前面に押し出していない事が多いから、彼女ほどの画力&画風でなくても良いのだが、せめて原作に忠実なキャラクターデザインをしてもらいたいものだ。


ところで、今月発売されたコミックスにも、ミステリ小説のコミカライズものがある。
「月光ゲーム」という、知る人ぞ知る有栖川有栖氏のデビュー作。学生アリスシリーズの第1弾である。
夏休みに大学生がキャンプをしていた山が噴火し、孤立した状況の中で殺人事件が起こるというストーリー。ド派手なトリック等に頼らず、フーダニットに徹しているあたりがミステリ好きのツボをくすぐる作品だ。
(あえて「マニア」とは言いませんよ。私はそこまで詳しくないので…)

有栖川作品は、登場人物がかなり魅力的なためか、女性ファンがとても多い。
それぞれ自分の中でイメージが固定しているだろうし、コレをコミカライズするのは勇気がいると思うのだが、それにあえて挑戦したのが鈴木有布子という漫画家さんだ。

けっこう最近出てきたWings系の漫画家さんで、オリジナル作品は3冊ほど出ている。
(ちなみに「罪と罰(バチ)」という作品の初版では、鋼の錬金術師の作者である荒川弘氏が帯コメントを書いている)
煌びやかでなく妙な癖もない、肉感的過ぎずそれでいて薄っぺらすぎない。素朴…と言うと下手そうに感じるかもしれないが、決して画力がないわけでもない。
全体的に、マンガチックという程デフォルメされておらず、きちんと「人間」を描いているという感じだ。

元々、彼女のオリジナル作品が好きなのでチェックしていたのだが、普段がほのぼのした作風なだけに、果たしてミステリに合うのかどうか。少々不安に思いながらも購入してみた。


これはオッケー!
グッジョブ鈴木有布子!

江神さんの程よいカッコ良さと、アリスの程よい素朴さがちゃんと出ている。
そうなのだ。江神さんには鼻につくようなスカしたカッコ良さはいらないのだ。このくらいのカッコ良さが丁度いい。
どうして鈴木有布子がコミカライズすることになったかは知らないが、この人選をした担当者に感謝。

実はこの作品、原作を読んだ時に、頭の中で整理しきれなくなる人もいる。
なんせ、原作者様も認める登場人物の多さ(笑)。17人だぞ?
原作で混乱した人には漫画版を読むことをおススメしますよ。漫画を読んでからもう一度原作を読み直すとけっこうすんなり整理できると思う。

次もぜひ鈴木有布子でコミカライズしてもらいたいなあ。
彼女の描くマリアが見たいぞ。
ざぶとん一枚。→

  by RX-Kei | 2006-04-12 03:06 | 本や音楽 | TOP▲

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